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GVA制震住宅の達成すべき性能目標と制約条件

   
 
1.GVA制震住宅の達成すべき性能目標

性能目標として、
@中地震時における損傷限界層間変形量を1/120以内とする。
A大地震時における安全限界層間変形量を1/30以内とする。 
2.木造住宅特有の制約条件
@木材は柔らかく、めり込み易い性質をもつこと。
A木材の製材としての品質、強度及び現場の施工条件による品質にも
  ばらつきが大きいこと。
 製品化において配慮したことは、ダンパーを直接木材に接着させる工法は、 接着を確保するために、プライマーを使用する必要がある。 これは作業者の火災の危険を伴うだけでなく、作業者、 居住者の健康阻害の恐れがある。また、現場の施工に依存するという木造住宅の特性からみても品質レベルでのバラつきが生じる。 上記3点の理由を避けるため、金物を介した機構とする必要があった。
 
3.各種ダンパーの仕組と利点、欠点
@低降伏点鋼材ダンパー
仕組み:極軟鋼の降伏変形する際のエネルギー消散(熱エネルギー変化)を利用する。
A:鉛ダンパー
仕組み:純度の高い鉛が大変形領域で優れた繰返し塑性変形能力を示すことを利用するものである。
@ オイルダンパー
仕組み:速度依存型の減衰機構として、車両用として広く使用されているショックアブソーバーを大型化したピストン式のものがある。
 
A粘性ダンパー

仕組み:オイルダンパーと同じ原理で高分子系の高粘性の液体を鋼板の間に充填するものである。
仕組み:2面間の固体摩擦を利用する。
仕組み:粘弾性体のせん断変形200%〜500%を利用する。

GVAがダンパー素材(制震材料)に
 VEM(住友3M社製)を採用した理由

   

 上記の種々のダンパーのなかで、粘弾性体を採用した理由は、上記木造住宅の特性に最も合致していること、かつ一定条件を満たせば、大地震後ダンパーの取替えが必要のないという理由からである。 粘弾性体には非加硫ゴムやアクリルの樹脂がある。黒いゴムに比べアクリル樹脂は経年変化に強い。 しかしながら化学的素材に変わりないため、経年変化に伴う品質の維持が課題となった。 製造及び、製品の品質、性能確保にはダンパーメーカーの技術水準の高さと、試験研究成果、物件での実績の豊富さが重要な要件となった。 総合的に判断した結果、GVA工法で採用する粘弾性ダンパーは、高層ビルで最も多くの実績と信頼性の高いデータのある住友スリーエム社製のVEMとなった。

GVAダンパーが左右15ミリのスライド・ロック機構になった理由

   


 現在GVAダンパーは厚み5ミリを確保している。 また、左右15ミリでロックすると、拘束板同士がぶつかり、ダンパー破断を防ぐスライド・ロック機構となっている。 この理由は、振動という繰り返し現象、あるいは大きな余震を想定して、ダンパーそのものの破断を防ぐことである。 そのためにはダンパーの塑性変形許容比である500%以内に余裕をもって収める必要があった。 具体的なロック状態は静的な加力実験(建築基準法で規定されている変形荷重耐力試験)ではフレームの変形角1/100におこる 。しかし、動的実験ではダンパーが速度依存を示すため、加振速度によりロック時期が異なってくる。行った壁実験では1/60でロックが確認された。 ロック後、静的加力試験では、最大8tの最終耐力を発揮する。このとき、GVA工法は耐震工法となって、筋交いや面材の耐力と合計され、予期できない巨大地震でも、ダンパーを壊さず踏ん張るように設計されているのである。


GVAフレームがダイヤモンド形状になった理由

   
1. フレームにおける減衰定数と剛性の幾何学的関係から

 同じダンパーを壁に同じ数量設置する場合でも、フレーム内のどの個所に設置するかで、フレーム頭部の変形量とダンパー部の可動変形量の比により変化する。 例えばフレーム変形よりダンパー部の変形が幾何学的変形に2倍であればフレーム換算剛性とダンパー部剛性の比は速度が2倍速くなるので4倍に上がる。 理論上は合理的システムに思えるが、木造フレームに採用すると剛性が上がりすぎたことでダンパーはまったく可動せず、ダンパーと言うより唯の固定筋交いとなることが実験で確認できた。 これは、力が接合部及び、木材のめり込み、木材の曲げに流れたためで、ダンパーの動きが当初の目論見に反する結果となるのである。 フレーム換算剛性は大きくなるが、ダンパーが動かず、減衰がでない結果となる。
 上記と逆にフレーム頭部の変形量とダンパー部の可動変形量の比が小さくなると、ダンパー部は効率よく運動する。 フレームの減衰定数は大きくなるが、フレームの換算剛性は飛躍的に小さくなる。 つまり減衰定数とフレーム剛性はトレード・オフの関係があり、結果としての減衰力は大きな差がなくなる。 GVAユニットのダイヤモンド形状は木造特有の性質を鑑み、性能目標達成のために上記の課題を設計的に煮詰め収斂した形状なのである。

2. 耐震性能確保のための木造住宅特性との関係から

 制震化する建物の耐震性能は地震力に対して建物を塑性化(建物が壊れる状態)させずに常に弾性状態にする事が理想である。 そのためにダンパーは初期の弾性振動の範囲でなるべく効率良くエネルギーを吸収させる必要がある。 そのためにはGVAダンパーの初期剛性は通常壁のもつ初期剛性に近い動的剛性を持たせることで、建物自体を壊さないあいだに減衰性能を発揮させることができるのである。

3tアンカーが必要な理由

         

 壁倍率は法律上5倍までという規定になっている。フレームの壁倍率5倍の時には、「0.2トン×5倍=1トン」の水平力が柱頭部に掛かる前提となる。フレームの縦横比が『3:1』の場合であれば、引き抜き力は「3トン」となる。柱に掛かる建物重量は、ほぼ0.5トン程度であるから、差し引くと2.5トンのホールダウン・アンカーが必要となっている訳である。
GVA工法は両筋交いとの併用が可能で、制振壁として間仕切りを別に設ける必要がない。動的繰り返し加振試験によると、GVA工法の初期剛性(1/120変形時のフレーム剛性)は合板と同等である。併用する場合には、4倍(両筋交い)+2.5倍(GVA)の、6.5倍の倍率相当になる。「2トン×6.5倍=1.3トン」の初期剛性を有している。そのため、引き抜き力は、「3.9トン」要求される。柱に掛かる建物重量0.5トンを差し引いて『3.4トン』のアンカーが必要となる。
 しかし、GVA工法の主目的は、初期剛性を高める(1/120の変形時0.2G以上の外力に耐えることを目指す)ことだけではなく、大変形が生じるような大地震の際に大きな耐力効果を発揮することである。大地震の際には水平力が1G掛かると言われている。Ds(材料の粘りや減衰を考慮した低減係数)を考慮しても0.5Gが建物に横から掛かる。大地震への対応という意味では、アンカーの耐力基準は短期耐力ではなく、最大耐力が重要なのである。短期基準接合引張り耐力に対して、 2.5倍(0.5トン÷0.2トン=2.5)の最大耐力が必要になる。よってGVA工法には3.4トン×2.5倍=8.5トンの最大耐力が出るアンカーが必要となる。3トン用(GVA指定品B―HD30は実質4トン)のアンカーは、どのメーカーでも最大耐力6トン程度(当社指定品は8.5トン)を保有しているため、GVA工法採用の際には必ず柱頭柱脚に3トン用のアンカーを設置する必要性がある。
  
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